アキ工作社

photo 矢野紀行 (Nacasa & Partners Inc.,)

photo 市川かおり

アキ工作社
AKI co.,ltd.

大分県安岐町
2003.04~
2005.4月完成
住宅・工場・アトリエ
設計監理:
意匠:塩塚隆生アトリエ
構造:大賀成典
設備:河野設備設計室

施工:佐伯建設

敷地は、大分空港近くの人口1万人程の安岐町にあります。海に近い河川敷に位置 し、昔からの集落に隣接した場所です。アキ工作社は、ダンボールマネキンとニッ ト、ふたりのデザイナーのパートナーシップの会社です。そのため、40坪のダン ボールマネキン工場、20坪のニットのアトリエ、20坪の住居が併存することにな ります。
敷地の周囲は河川敷地のため、拠り所のない更地が広がっていることもあり、建物で 領域(庭らしきもの)をつくること、基本的には平屋であることをベースとして設計 を進めました。機能的に、アトリエと住居をつなげる必要があり、また騒音(ダン ボールのカット時)の問題から工場をアトリエや住居とは分離する必要もあって、4 0坪の建物を2棟設けることになりました。60°に開いたハの字型の配置は、中庭 として閉じられた領域をつくるのではなく、まわりの集落や来客に対して、領域をつ くりながらも開かれた場所として運営したいという考えからでてきました。
 その上で建物は、ふたりのプロダクトをモチーフにしたり、連続性を持たせたりす るでもなく、また、ふたりのデザインに対して拮抗するような際立つものでもく、そ れでいて全く乖離するでもない姿にしたいと考えました。切り妻型の形状は、それら の考えを調停してくれるものでした。既存の集落の建物の形状との類似もあります が、なんでもない倉庫や工場が持つ器としての存在感を浮かび上がらせるためでもあ りました。それは、昼間は半透明のFRP板で全体を覆うことで物質感をより際立た せ、夜間は、半透明の素材を通して現れる光りによって昼間とは異なるルールによっ て表情を現す。そのギャップによって、その存在感を持たせようと考えました。室内 の考え方も、柱や梁等の構造体がそのまま現れいる分器としての外皮部分(構造体を 含む)と、その他の間仕切り材とを分離した表現にしています。