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photo YASHIRO PHOTO OFFICE
※photo 住想
ハウス&リベラ
場所:大分市
設計:2019.10~2023.01
施工:2023.02~2023.10
用途:店舗併用住宅
床面積:95㎡
構造規模:木造2階建
設計監理:塩塚隆生アトリエ
施工:住想
余白的な街区に棲むための「建ち方」
40代夫婦と子供の4人家族が住む店舗(美容院)併用住宅である。敷地は、近年の駅周辺の高架化にともない区画整理されたエリアにあり、既存の街区に鉄道が拡張されることによって生じた市道と2つの私道で3方を道路に囲まれた都市の余白のような場所である。計画では、敷地の大きさに対して必需機能を満たそうとすると、建蔽率いっぱいに建物を建てる必要があったため、まず敷地・街区に対しての「建ち方」を考えることから始めた。
区画整理後の計画地は更地で、街区の北側の市道と南側の市道をつなげる交通のショートカットとして車両や歩行者が利用していた。その交通動線をドライブスルー形式の駐車場として解釈し直し、建物を敷地の東側に寄せて通り抜けの空間を設け、同時に西側の住宅と適度な距離を保つことで住環境を確保できるようにした。街区内で空地(道路・駐車場)と建物が反復する配置は互いに住環境を確保しながら、空地は北側の高架下エリアとボードウォーク広場とを合わせた都市の抜けを南側の住宅街区へと連続させることになる。
市道に面した北側はJRの高架線が隣接するため視線と遮音の観点から、また私道に面した南側は隣家との距離や通行者からの視線も近いため、遮る必要があった。そのため、開口部は東側と西側の街区内に向かって設けながらも、周囲の標準的な住宅とは異なるサイズ・高さにすることで、このエリアの様々な風景が内部にもたらされるようにした。 室内は、きわめて簡素なつくりになっている。天井の高い店舗の上にはコンパクトな寝室や個室を配置し、大きな空間の2階LDKの下には天井高さの低い水回りを設けることで、階相互の床の高さ・天井の高さの組み合わせによって使い方と空間の大きさを調整しながら適度なボリュームにおさまるようにしている。
外壁仕上げのモルタルは可塑性があり、こねてかたち作り出す塑造(そぞう)である。一方、室内の仕上げは全てラワン合板で、木を削り出した空間といえる。この外部と内部の対比は、街区に建設可能なボリュームを可塑的につくって、その中を削り出してまちの余白になんとか住処をつくろうとしたあらわれのようにもみえる。