大野町バスターミナル

photo 市川かおり

大野町の
バスターミナル

Ohno bus terminal

大分県大野町田中
(大野町役場前)
2001.11~
2002年4月完成
RC造
計画面積120m2

設計監理:
意匠:塩塚隆生アトリエ
構造:大賀成典
設備:河野設備設計室
照明:TLヤマギワ
施工:(株)後藤組

<掲載誌・受賞>
Wallpaper* 2004.1-2号
JCDデザイン賞2002:奨励賞
「新建築」2002年6月号

大分市から熊本阿蘇へ通じる国道57号線沿い、山間の人口5000人程の町に立つバスターミナルの計画である。国道の拡幅工事にともなう地域の再整備、まちづくりの方向性を示すような計画が求められていた。

 バスターミナルといっても簡単な待合室と公衆便所、いくつかの大きなベンチが設けられた程度の小さなスペースである。計画の始まりは、バスターミナルの機能をきっかけに、昼間はお年寄りや子供たちが、登下校時には中学生や高校生が集える、町にこれまで無かった公園的な場所を設けようとするものであった。

 町役場に隣接した計画地は、国道を挟んで商店街と官庁施設群との境界的な位置にあり、国道とは1.2M程のレベル差をもっている。そのレベル差を解消し相互の行き来を容易なものにすると同時に、計画地の国道側と役場側それぞれにバスが停留するというバスターミナルとしての機能を満たすため、計画地全体を緩やかなスロープとした。

 わたしたちは、国道沿いの雑然とした風景に対して、小さな施設がどのように現れるかということを考えていた。ここでは、国道沿いの商店や住宅のようにある一定のヴォリュームを持つことでその背後にある風景を途切れさせる「建物」として立ち上げるよりむしろ、車道や歩道、駐車場などの「地盤面」の延長でスペースができているような在り方ができれば、この場所を取り巻く環境を上手くつないでいけるものになるのではないかと考えていた。

 待合室や公衆便所を覆う屋根、スロープ上の大きなベンチなどは、床の延長として同じ仕上げのコンクリートの板が跳ね上がったような表現にしている。コンクリートを素材として選択したのも歩道などの仕上げとの連続を意図したためである。コンクリートはそれ自体に防水性能を担わせ、仕上げを兼ねた躯体としての厚みのみが現れるようにしている。また便所と待合室の壁は、コンクリートとは対照的に簡易な覆いとしてFRPの波板などの素材を選択した。できるだけシンプルな操作とダイレクトな表現で、「地盤面」の延長としての特質に近づけることにより、この計画がランドスケープのようであればいいと考えていた。

■コンペ時提案図面