湯平温泉街
修景プロジェクト
大分県湯布市湯平
設計:2005.10~12
施工:2006.01~03
外観改修
湯平温泉はかつては療養温泉として繁栄していた。現在はその賑わいはないが、今日 まで過度に観光化されなかった分、石畳の坂道を中心とした趣を残す独特な温泉場と して知られている。今回のプロジェクトは、県、旅館組合、コンサルタント、設計者 などでつくる「湯平温泉活力創造会議」が中心となって行われる。基本的には外観改 修がプロジェクトの対象となり、参加を希望した15軒程の旅館や店舗・公共温泉場 等の改修を2カ年にわたって行うことになっている。これに対し、創造会議が選んだ 5人の設計者がそれぞれ2軒を目安に修景計画をすすめている。意匠の方向性として は、例えばどこかの温泉風、また和風洋風といった決まり事はなく、既存の風景から 湯平温泉独自のデザインをつくりたいといったものだった。選ばれた設計者がそれぞ れの視点での修景案を創造会議に対しプレゼンテーションを行い、その中から全体の方向性を決めていく方法がとられた。シオツカアトリエでは、温泉街の入り口に位置 する旅館「高尾荘」と石畳を登り詰めた橋詰めの店舗「宝来屋」の2軒を担当してい る。
高尾荘
TAKAO-SO
旅館外観改修
設計監理:塩塚隆生アトリエ
施工:本田建設
寄せ棟造りの和風旅館で、そのヴォリューム・屋根形状から湯平温泉を印象づけるよ うな存在感がある。屋根・外壁共大きな面を持っているため、それらがのっぺりと見えないようにしたいと考えた。既存瓦屋根を金属板の菱葺きに、既存外壁サイディン グを金属板横葺きに改修。アルミサッシ窓部は出巾30㎝の金属板のフレームをまわ して出窓風にしファサードに立体感を与えようとした。全体を燻し銀色に統一するこ とで、凹凸のある全体のボリュームに一様なトーンに整え、存在感と黒子のような静 かさを併せ持つ建物にしたいと考えている。
宝来屋
HORAI-YA
お土産店外観改修
設計監理:塩塚隆生アトリエ
施工:太平寺工務店
川縁に張り付くように建っている3階建ての建物。2階が石畳のレベルにあたる。ま ず外壁をブラウンが少し入ったグレーで吹き付けることで色調を周囲の風景に合わせ る(湯平はじめっとした曇天が似合う)。既存金属板屋根も同色で塗り替える。生活 感のある2階の窓の目隠しと大きな外壁面を分割するために、45㎝巾と75㎝巾の 金属板(燻し銀色)一文字葺き仕上げの板状のボーダーを、外壁から10㎝程浮かせ て上下に取り付ける。また、石畳に面した既存のモザイクタイルの外壁部分にも同じ 金属板を貼り付る。店舗正面のアルミのフロントサッシは外壁と色調を揃えた木製建 具に取替る。いくつかの異なる材料の色調を合わせて施すことで、そっと馴染んでい るものにしたいと考えた。
photo 矢野紀行 (Nacasa & Partners Inc.,)