photo 矢野紀行 (Nacasa & Partners Inc.,)
10 houses
大分県大分市
2008.03完成
公営住宅
木造1階建・2階建
85m2・10棟
設計監理:
意匠:塩塚隆生アトリエ
構造:大賀成典
施工:豊國建設
大分市の郊外に位置する市営住宅の計画。市内といっても人口が少ない地域で、小学校の隣接地に子供を育てる環境を整えた住宅団地を計画することで、人口を定着させようという試みで計画された。 計画地は眺望のよい丘陵地で田や里山に囲まれた環境にあり、そこに木造で25坪程度の住戸を10棟設けることが求められた。
まわりの豊かな環境とのつながりや、既存の風景との連続性を考えるていくと、各住戸と住戸との間をどのように計画するのかがテーマになってきた。その意味で、プランのバリエーションを増やすよりは、できるだけ少ないバリエーションとその反復で全体をつくりだすことで、建物と屋外環境とが同じ比重で計画されていることを目指そうとした。
各住戸を、それぞれ角度を振って配置することで、まわりの集落の自然発生的な配置との連続性を持たせたり、住戸間の視線をコントロールしたり、各住戸との間に不整形な隙間が生じることで公園のような共用スペースを敷地全体に設けるようにした。公園をつくることは与件に含まれていたが、まとまって設けるのではなく敷地全体にばらまくことで、全体が公園のようになることを意図した。また、敷地全体を回遊できる遊歩道を設け、地域の人との交流の可能性も持たせた。建物は、部材の統一という観点から同じ形状のサッシを窓の用途によって高さを変えて配置することで、どこが居間か寝室か分からないような計画にした。
計画全体を通して考えていたのは、10棟のコミュニティをこの10棟の中でクローズドさせないことだった。具体的には、中心となる公園や広場、集会場などを設けず、敷地全体の至る所でコミュニティを築ける可能性をつくっておくこと。そして、まわりの田や里山、集落との関係を閉ざさないような設えにすることだった。このようなコミュニティの在り方は、公営住宅の現在に残された可能性のひとつだと思う。