atuハウス

photo 市川かおり

atu ハウス
atu house

福岡県大野城市
2003.04~
2004.05完成
鉄骨造2階建
91.09平米
専用住宅

設計監理:
意匠:塩塚隆生アトリエ
構造:大賀成典

プロデュース:プロトハウス
施工:匠永工務店

敷地は福岡市のベッドタウンの外れ、ちょうど宅地から山林へと切り替わる境界に位 置します。敷地及びそのまわりは樹木に囲まれ、小さな水路を軸とした雛壇状の地形 になっています。これら周辺環境の落ち着いた雰囲気や、樹木を通した弱い日差し、 鬱蒼とした森からくるエクステリアの心地良さを、そのままインテリアとして演出す ることを考えました。ただその演出が、現実の環境を誇張していたり、どこか嘘っぽ くなってしまっては本来の心地良ささえも失ってしまうように思いました。例えば、 燦々とした明るさが似つかわしくない環境なのに、光が降り注ぐような空間になって いてはだめだろうと考えました。

 まわりの樹木の色を映し込み、かつ屋外の天候や時間に合わせて刻々と表情が変化 するインテリアとするため、建物の3面をガラスとしました。ガラスは、床からの高 さを1.8M程度に抑えることで、必要以上に光りを入れないようにしました。霞模様 の型板ガラスの多用で風景を緑色のモザイク模様に抽象化し、ガラス面以外の仕上げ や家具を白色とすることで、室内全体にまわりの緑が滲み込むようなインテリアとし ました。

 一方、建て主との話し合いの中で、仕上げや造作よりも気積を確保する方を選ぶこ とにしました。それは、高低差のある雛壇状のまわりの環境をインテリアとして感じ られるようにする、そのためのタテ方向の空間を得るのに好都合でした。ロフトス ペースを挟んで1階に水回り2階に寝室を配した部分で、それらを貫通する階段を移 動する時に体感することになります。このロフトスペースは、室内の風を抜くため、 樹木の色を室内に映し込むために設けたものですが、結果的に天井高さを3.15Mまで 押し上げ、インテリアの変化がより感じられる室の大きさになったと思います。ま た、天井の円形の照明器具は、大きさの異なるものをランダムに見えるように配置す ることで、刻々と変化するインテリアのその動きの性質を照明にも持たせたいと考え ました。

外壁は白の塗装鋼板の波板とすることで、天候によって建物の色合いが変化するとと もに、まわりの樹木の色を建物の表面に写し込もうと考えました。