カンザキクリニック

photo 矢野紀行 (Nacasa & Partners Inc.,)

カンザキクリニック
Kanzaki urology clinic

大分県大分市
設計:2006.10-12
施工:2006.12-2007.1
室内改装
延床面積:145.14m2
設計監理:塩塚隆生アトリエ
設備設計:(有)河野設備設計室
施工:豊國建設

「個別性と全体性」

大分市中心市街地に立つクリニックビルの一室の改装。泌尿器科を専門とするため、患者のプライバシーを考慮した居心地の良い空間が求められた。

各室の必要な大きさ、室同士のつながり、窓の位置などを考慮しながら計画をすると、各部屋が歪なかたちになる必要があった。パズルのピースを合わせるように、個々の部屋がこのかたちにならないと全体が関係づかないということになっていた。

そのかたちのまま壁を立ち上げると、隣接する部屋同士は関係するが、目に見えて全体を秩序立てるものがなく迷路性が強くなってしまう。そこで、FL+1720~2200の間の480mmのスペースに、透明ガラスもしくはミラーを施すことで全体が視覚的にひとつながりになるレベルを設けることにした。天井高さ2500の空間で、見上げると300mmの垂れ壁が各室のかたちをトレースしたように映し出され、視線を少し落とすと、ミラー効果で通りの樹木の緑を部屋の奥まで引き込んだり、風景の反復でどこまで空間がつながっているような、実際の面積以上の広がりを感じさせる。通常の視線レベルでは個々のプライバシーを確保できる。

また、隣接する部屋の床仕上げ材が異なるように、3種類の仕上げ材を個々の部屋にあててる。その平面形状と相まって各部屋は個別性を強くしながらも、全体としてはミラー効果と同様、反復されることで無限につなっがていく広がりを持ち合わせることになる。

個別性と全体性を持ち合わせることで、プライバシーと居心地の良さ(開放感)を実現できると考えた。