photo 市川かおり
杵築の住宅
KITSUKI RESIDENCE
大分県杵築市
1998.06~
2002.01完成
木造平屋建て
99.98m2
設計監理:
意匠:塩塚隆生アトリエ
構造:大賀成典
設備:河野設備設計室
照明:TLヤマギワ
施工:(株)竹内工務店
<掲載誌・受賞>
GA JAPAN 55号 3-4/2002
新建築住宅特集2002.09号
この建物は、別荘地として開発された海沿いの住宅地に立っている。敷地は、海に向かって南下がりの傾斜地にあり、造成されずに起伏のある地形のまま残されていた。北側を竹林の緑地帯、西側を前面道路に接し、敷地からは南側の海が木々の隙間から垣間見ることが出来る。
関西在住のクライアント夫妻は、九州の太陽と海を求めてこの地を選んだ。自然のままに残ったこの敷地を気に入り、この地形を壊さずに住宅を建てたいと思われていた。また、これから高齢となる夫妻にとっては、段差が無く、車椅子での生活も可能な計画とすることも大切なテーマだった。
高床とすることは、直接的には地形を壊さないこと、フラットなフロアで計画することから始まっている。しかしながら、高床がもたらす魅力は、地盤面が本来的に持ついくつかの意味を無効にすることにある。例えば、地盤面と同じレベルにあるフロアでは、直接出入りするのか、フィックスにしてしまうのか、それは庭なのテラスなのか、地盤面に対するスタンスの決定を迫られる。高床はこれらを計画の水準から外してくれる。
2Mほどの距離ではあるが、見下ろす地盤面は、我が庭というよりは、所有権の見えない野原にぽつんと建っているような思いにさせる。と同時に「敷地」を意識から遠ざけることで、隣地も道路もその向こうの木々や海をもこちら側に引き寄せることができる。
南側のファサードは、雨戸を動く壁として取り扱い、「壁」もしくは「壁でない面」の繰り返しで構成する。いわゆる腰壁のある2階的な窓と壁の構成になってしまっては、高床によって生まれる魅力が消えてしまう。掃きだしの開口は、「ただ空いている面」としてそこにある。 地盤面が抱えるいくつかの意味を無効にすることで、その地盤面が本来的に持つ以上の魅力を得ることを実現したいと考えていた。