photo 市川かおり
入江のゲストハウス
N guest house
大分県
1998.01~
2001.10完成
RC造2階建て
96m2
設計監理:
意匠:塩塚隆生アトリエ
構造:大賀成典
設備:河野設備設計室
照明:TLヤマギワ
施工:住想 行野富男
<掲載誌・受賞>
HAUSER(ドイツ) 2003.3-4号
ARCHITECTURAL RECORD 2003.04号
男の隠れ家 2002.11号
第6回JUKEN産業実施作品コンペ:
最優秀賞
新建築 2002.01号
小さな入江にたつ企業のためのゲストハウスである。断崖の自然林に囲まれた入江からは、 小さな島々が点在する遠浅の美しい海が臨める。その自然林と海に挟まれて隠れるように 佇む工場群。その片隅に建物は建っている。
計画の始まりは、工場に訪れる数人のゲストとゆっくりとすごせる場所がほしいという ものだった。リラックスして食事ができ、やすみたくなったらごろんとできる。海を見て いる人もいれば、話をしている人もいる。それぞれが思い思いに過ごしながらも同じ空気 を共有できる。そんなスペースをイメージしていた。
海は圧倒的な存在でそこにある。その圧倒的な海をも、あくまで建物を組み立てるため のひとつの要素にできないだろうか。視覚以外の感覚を遮断し、海を無声映像として壁と 同等のひとつの面として取り扱う。ガラスでフィックスされた、幅5M、高さ4Mの面は、 刻々と変化する映像を映しだし、ツヤの有る塗装を施した壁、天井、家具によってその変 化は室内全体へ広がる。これら変化する面に対してもうひとつの変化、つまり、階段と踊 り場を兼ねたフロアがいくつかのレベルをつくりだすことで様々な視点の変化を設ける。 このふたつの変化が重なることで、ひとつながりのスペースでありながら、それぞれが思 い思いに過ごすための様々な性格の場所をつくりだすことができた。
はじめてこの建物に訪れると、荒い打ち放しコンクリートと内部を伺い知れない黒いガ ラス、そのフォルムから工場のための貯水槽であったり何らかの機械が入った建物に見え るようだ。このような姿は、工場の一部として意識されながらもまわりの工場群とは隔絶 された非日常の内部スペースを持つことを実現している。海を映像に解体し、リラックス したスペースを提供するこの建物には、装置といった程度の佇まいが相応しい。