photo 矢野紀行 (Nacasa & Partners Inc.,)
WZ bldg.
WZ bldg.
大分県大分市
2007.06~
2009.02完成
改修棟:RC造4階建1388m2
既存棟:RC造1階建97m2
店舗・事務所
設計監理:
意匠:塩塚隆生アトリエ
構造(既存棟):K2構造設計
構造(増築棟):大賀成典
設備:河野設備設計室
施工:佐伯建設
地形としてのビル
大分市の中心市街地に建つビルの改装とその増築の計画。敷地は、北側のアーケード街と南側の裏通りの2つの通りに面している。アーケード街に対しては4階建ての1・2階分のファサードが面し、裏の通りには増築スペースをはさんで4層分のファサードがそのまま見える。増築スペースには、2つの通りをつなげるパスを挟んで平屋の増築棟と庭を設けた。パスは、人の流れを変えることで停滞している裏の通りの価値を見直そうするものである。
既存・増築棟とも事務所もしくは店舗がテナントとして入るため、主に全体の区画と、共用部とテナント・スペースとの関係を計画した。ビル全体を約20のスペースに区画する必要から、共用部を歩くことで個々のスペースでの活動が次々と切り替わって見え、そのシーンの組み合わせによってビルを体験する人それぞれが、異なる印象が持てるようにしたいと思った。
そこで、区画されたスペース内での活動を縁取って並べて見せるための「フレーム」を、区画する壁として設けた。それぞれのフレームには異なる色を施し、シーンの切り替わりが意識できるようにした。また、共用スペースを歩く人とテナント内で活動する人との視線がずれるよう、開口高さを調整した。このフレームはアーケード街に面したファサードにも現れ、それぞれのテナント内の活動を切り取って見せる。さらに天井面でも繰り返され、構造体から離してフレームを設けることで、設備配管のスペースをつくり既存の構造体を縁取って視覚化させている。
既存のビルの構造体自体を、小さな丘や隆起した地盤のように考え、個人の所有を越えて街のストックであり更に街の地形として建物をとらえることは、可能性を広げてくれる。今回の計画では、1階のパスや庭、2階のアーケードに面したテラスや通りを視覚的につなげる共用スペース。3階のテナント間に設けたサービススペースやコンクリートのベンチを配したラウンジスペース。そして4階の屋上テラス。これらは、この規模の新築のビルでは占有面積が小さくなり実現は難しい。役割を終えたビルだからこそ、街に還元できるスペースを持つことができ、それが停滞した商店街や街の新たな魅力につながっていく。